だいぶ日暮れの時間が遅くなってきた
今日この頃ですが、
皆様、いかがお過ごしでしょうか…?
さて、最近いろいろと考えることが増えました。
現在の職場や、これからのこと、今やっていることなどなど。
何を今更と思われるかもしれませんが、
正直、ふとした瞬間にこういったことが
頭に浮かんでくるのです。
そして、あれこれと悩んだ挙句に
大学時代の奇声が復活しました。(笑
まあ、なんにせよ、今後自分で選んだことに対して、
後悔だけは絶対にしたくないですね。
そして、話を変えますが、現在更新中の小説を
全て掲載し終えたら、本格的にこの日記の引っ越しを考えています。
暫くは、この日記からリンクで飛べるようにしようかと思っています。
いつの間にか、更新し続けて8年近くお世話になっていました。
以上、本日のgachamukでした。
それでは、どうぞ。




 それからしばらくして、城に着いた兵士たちは、隆宗の労いの言葉を受けて、それぞれの家へと帰還した。
 そして、隆宗を始めとした武将たちも、着込んでいた鎧を脱いでくつろごうとした時だった。
 どたどたと慌ただしい足音が響いたかと思うと、女中頭のおさねさんが、ひどく狼狽した様子で部屋に入ってきた。
「お、お、おお、お館様!大変でございます!」
「どうしたというのだ?おさねさん」
 いつも物腰が柔らかく、とても落ち着いているおさねさんが取り乱しているのを見たのは初めてかもしれないと思いつつ、隆宗はとりあえず落ち着くように告げた。
 しかし、
「こ、これが落ち着いていられますか!」
 おさねさんの怒鳴り声に、隆宗と鉦定、明治が驚いた。
「あのぉ…」
 明治が、おずおずといった様子で、提案した。
「とりあえず、何が大変なのか、おさねさんに話してもらった方がよくないですか?」
「そ、そうです!落ち着く場合じゃないんです!お館様、よく聞いてください!」
 何やら真剣な様子のおさねさんに、その場の全員が固唾を飲む。
 おさねさんは、一度深呼吸をした後、おもむろに口を開いた。
「大変言いにくいんですけど…、奥方様と幸が攫(さら)われました」
「「「何だって!?」」」
 おさねさんが告げた事実に、三人は驚愕して、おさねさんに説明を求めた。
 おさねさんは、蒼白な顔を俯かせて、起きたことを説明した。
「実は、お館様たちが戦に出た後、奥方様と幸が城下町に買い物に出かけたんです。私は女中が行くからと止めたのですが、奥方様と幸がどうしても、お館様たちに料理を作りたいからと聞かなかったんです。一応、護衛を付けて行ったんですが、買い物に行った先で、野盗が急襲してきたらしく、護衛は全員やられて、奥方様と幸はそのまま拉致されていったんです」
「その野盗は今どこに!?」
「え?あ、その、手紙があります」
 突然の明治の声に驚いたおさねさんは、明治の勢いに流されるように、野盗からの手紙を出した。
山辺隆宗、貴様の妻と連れの女中は預かった
―城下の外れの河原にまで来い
―部下を連れてきても構わないが、
―こちらには人質がいることを忘れるな
 明らかな脅迫文が記された手紙を、隆宗はぐしゃりと握りつぶす。その肩は、怒りのあまり震えていた。
「すぐに兵を…」
 隆宗が、命令を下しかけた瞬間、明治が乱暴に戸を開けて、廊下へ飛び出した。
「待て!明治!何をするつもりだ!」
 隆宗が制止するが、明治はそれを無視して、自分の部屋に飛び込むと、刀を掴んで城を飛び出していった。
「ちっ、追うぞ!鉦定!」
「はっ!」
 隆宗と鉦定も、必要な武器を持って飛び出していった明治を追いかけた。
 一方、明治は、城下を走りながら、美作村で矢矧が殺された時のことを思い出していた。
「(あのころの僕とは違う!今度こそ守って見せる!)」
 町の人々が何事かと振り返るのも構わず、明治は懸命に馬を走らせ、ついに指定された河原に辿り着いた。
 そこで明治が目にしたのは、手を後ろに回されて、体を縄で縛られ、口に猿轡(さるぐつわ)をかまされた光姫と幸の姿だった。
「幸さん!光様!」
 明治は、馬から飛び降りて、急いで二人の元へ駆け寄ろうとした。
 しかし、今まで身を隠していたのだろう、あちこちから野盗たちが姿を現すと、幸たちと明治の間に立ちふさがった。
「おやおやおや」
 最後に姿を現した、野盗の頭領らしい人物を目の当たりにした明治は、驚愕して目を見開いた。
「お、お前は…、まさか…、美作村で矢矧を殺した…」
「ほう。覚えていてくれたとは嬉しいねぇ」
 明治の反応に、野盗の頭領、斑(むら)蜘蛛(ぐも)がにたりと笑った。
 明治は、怒りを露(あら)わにしながら、斑蜘蛛を睨みつける。
「お前が二人を攫ったのか!」
「見ての通りだと思うがねぇ」
 斑蜘蛛の飄々(ひょうひょう)とした態度に、明治の怒りが爆発した。
 明治は、手にしていた刀を一気に抜き放つと、一直線に斑蜘蛛へと突進した。
 斑蜘蛛は立ちふさがろうとした部下たちを止めると、明治が振り下ろした刀を身軽によけ、無防備になった明治の腹を、思いっきり蹴り飛ばした。
「うわぁ!」
 明治は蹴られた勢いで、ゴロゴロと草の上を転がる。
 それを見て、斑蜘蛛はけたけたと笑いながら、明治を挑発した。
「どうした?坊主。お姫様と娘さんを助けるんじゃないのか?」
 明治は痛みに呻きながらも、どうにか立ち上がって、再び斑蜘蛛に立ち向かっていくが、今度もまた、明治の刀は避けられて、蹴り飛ばされてしまった。
 激しくせき込みながらも、どうにか立ち上がった明治を、斑蜘蛛は急に冷めた目つきで見た。
 そして、そのままくるりと踵を返すと、
「もういい。お前はもう飽きた。俺はお殿様が来るまで寝るから、後はお前たちで適当にやってろ」
「ま、待て!」
 明治は慌てて追いかけようとするが、斑蜘蛛が指を鳴らした瞬間、野盗たちが立ちふさがって、明治は囲まれてしまった。
「どけ!」
 明治は、目の前の野盗に向かって刀を振るうが、闇雲に振った刀が敵を捕らえるはずもなく、虚しく空振りする。
「へっへっへ」
 下卑た笑いを浮かべながら、野盗の一人が前に進み出て、ゆっくりと刀を振り上げた。