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ようやく日中に暖かさが戻ってきた
今日この頃ですが、
皆様、いかがお過ごしでしょうか…?
さて、ここ数日、何故か仕事中に
重い荷物を運ぶことが多々あったせいか、
今現在、酷い筋肉痛に悩まされています。
自分が運動不足だと改めて思い知らされました。(汗
とはいえ、まだ筋肉痛が二日後に来るなんて言う
年よりじみたことはさすがにないですが。(笑
そうそう、先日も書いたこの日記の引っ越しのことですが、
一応、引っ越し先をエキサイトブログにしようかと思います。
理由は何となくです。
そんなこんなで、また少しバタバタするとは思いますが、
よろしくお願いします。
ちなみに、現在、新しい話を考察中ですが、
その話は、新しいブログでのお目見えになるかと思います。
というわけで、いつものを更新します。
今回で、5章も終了します。
以上、本日のgachamukでした。
それでは、どうぞ。
「(僕は、仇を討つどころか、誰かを守ることさえできないのかな)」
明治が、自分の非力さに悲しくなりながら、迫りくる刀を見つめていると、何かが風を切る音と、「タン」という軽い音が聞こえたかと思うと、明治を殺そうとしていた野盗が短い悲鳴を上げて、そのままどさりと倒れてしまった。
何が起きたのかよくわからない明治が、倒れた野盗を見てみると、額に矢が突き刺さっていた。
「明治!無事か!」
突然響いた声に振り向いてみると、馬上から矢を射終えた態勢の隆宗と、急いで馬を走らせる鉦定が見えた。
鉦定は、馬を走らせたまま、明治を囲んでいる野盗たちに突っ込んでいく。
突然仲間を殺されたことで、野盗たちはいきり立っていたが、鉦定の行動の意味を知るや否や、蜘蛛の子を散らすように、逃げ惑った。
野盗たちの包囲から抜け出せた明治は、ほっとしながら訊いた。
「鉦定さんもお館様もどうして?」
鉦定の後ろから追いかけてきた隆宗は、馬から降りると、明治の頬を叩いた。
「馬鹿者!」
突然叩かれて唖然とする明治に、隆宗は矢継ぎ早に言葉を浴びせていく。
「なぜ飛び出していった!無策に飛び出していけば、お光たちの命はもちろん、お前の命さえも危なかったのだぞ!それも単身で乗り込むなど、愚の骨頂!俺たちが間に合ったからよかったものの!まったく!」
「お館様、説教は後にしたほうが…」
「む、ああ、そうだったな」
鉦定の一言で冷静さを取り戻した隆宗が、視線を向けると、斑蜘蛛が部下たちを伴って近づいてきていた。
隆宗は、斑蜘蛛を憎々しげに睨みつける。
「貴様か。俺の妻と女中を攫った犯人は」
「ああ、そうさ。最高の演出だっただろう?戦から帰ってきたら、愛する妻が攫われていたなんて。ひっひっひ」
にやにやと笑いながら答える斑蜘蛛に、鉦定と明治が激昂(げっこう)しかけるが、隆宗がそれを手で制しながら訊いた。
「貴様の目的はなんだ?金か?地位か?」
「全部さ」
斑蜘蛛は欲望に顔を歪める。
「俺は、すべてが欲しい。金も、地位も、名声も、女も、この世のありとあらゆるものすべてが欲しい!まずは手始めに、貴様を殺して、この国を乗っ取るつもりさ」
斑蜘蛛が話しながら指を鳴らすと、野盗たちが隆宗たちを取り囲んだ。
隆宗は、にやりと笑いながら言った。
「それは無理な話だな」
「何?」
「俺が例えここで死んだとしても、家臣たちには後継者を立てるように言ってある」
「後継者だと?ふん。ならば、そいつも殺すまでだ!やれ!」
斑蜘蛛の号令で、野盗たちが一斉に飛びかかってきた。
隆宗、鉦定、明治は、それぞれの刀を抜いて、野盗たちを迎撃する。
しかし、隆宗と鉦定は、さすがに戦いなれていて危なげないが、明治は違った。
相手の刀をなんとか交わしたり、受け止めたりするだけで精いっぱいであり、例え相手に隙ができても、反撃しようとはしなかった。
その様子に気づいた隆宗が、明治に怒鳴る。
「明治!なぜ反撃しない!」
明治は、辛そうに顔を歪め、
「できません!人を斬ることなんて、僕には…」
「甘ったれるな!」
弱音を吐く明治を、隆宗は一喝した。
「お前が反撃しなくても、敵は容赦せず、お前を殺しに来る!俺たちが庇うにも限界がある!死にたくなければ、やるしかないんだ!」
隆宗は、明治を説教しながらも、向かってくる敵を切り伏せる。
「俺が戦場で生き延びろと言ったのは覚えているな?」
明治は必死に敵の攻撃を捌きながら頷く。
「生きることを諦めるな。生きるために、自分が今できることを必死になって実行しろ。後悔も懺悔も後でできる。あれはそういう意味だ」
―ザク!
「がっ!」
突然、隆宗がうめき声をあげた。
「お館様!」
鉦定が、隆宗を斬ろうとしていた野盗を切り伏せて近寄る。
明治も、敵の攻撃を捌きながら隆宗を見ると、隆宗の左肩から血が流れていた。
どうやら、明治に話しかけていたために、完全に戦いに集中しきれていなかったらしく、一瞬の隙を突かれたようだ。
「お館様!」
鉦定が隆宗を庇いながら声を掛けると、隆宗はどうにか立ち上がって、襲ってきた野盗を迎え撃った。
「大丈夫だ!それよりも目の前のことに集中しろ!」
鉦定は、すぐに了解して、目の前の敵に集中したが、明治は違った。
隆宗が流した血を見て、美作村での事件が脳裏にフラッシュバックしたのだ。
明治を庇って、斑蜘蛛に斬られた矢矧。
血に染まった刀を持って、狂気に顔を歪める斑蜘蛛とそれを見て笑う野盗たち。
夥しい血を流しながらも、明治に安心させるような笑顔を向けた矢矧。
そして、同時に、夢の中で矢矧が言ったことも思い出した。
―強くなれ、誰かを守れるくらいに
瞬間、明治の目に強い意志の光が宿った。
「ああああぁぁぁ!」
明治は叫び声をあげると、野盗の刀を受け流して、そのまま野盗の右腕を切り裂いた。
その瞬間に、明治の手に嫌な感触が伝わってくるが、これを無視して、すぐそばにいた野盗を切り伏せる。
今までと全く違う様子の明治に、野盗たちは怯んだ。
当然、隆宗たちも驚いていたが、今はそれどころではないと、瞬時に我に返ると、明治の両側に立って、怯んだ野盗をなぎ倒す。
「明治!行け!」
鉦定が、明治を促す。
「私とお館様でこいつらを食い止める!お前は、斑蜘蛛を倒して、奥方様と幸を助けろ!」
明治が戸惑いながら、隆宗を見ると、隆宗はこくりと頷いた。
明治も頷き返すと、襲い掛かってきた野盗をかわし、そのまま包囲を突破して、斑蜘蛛の元へと走っていった。
「斑蜘蛛!」
明治は、斑蜘蛛のそばに辿り着くと、走った勢いのまま、刀を一気に振り下ろした。
―ガキンッ!
刀同士がぶつかる音が響いた。
斑蜘蛛はにたりと笑いながら、明治をはじくと
「小僧。俺様に向かってくるか。あの村では、震えて隠れているか泣くしかできなかった貴様が」
「黙れ!」
明治が刀を横なぎに振るが、斑蜘蛛はそれをバックステップでかわす。
「ほう。あの時より、少しはましになったじゃねぇか。いいぜ、来いよ。切り刻んでやる」
斑蜘蛛は、凶悪に顔を歪めると、刃をべろりと舐めた。
対する明治は、刀を正眼に構え、一息に斑蜘蛛に接近し、鋭く刀を振り下ろした。
しかし、斑蜘蛛はあっさりと明治の刀を受け止めると、反撃とばかりに、怒涛の勢いで刀を振り始めた。
「ほらほらほらほら。どうした、どうした!」
斑蜘蛛の戦場で鍛えられた剣術に、明治は守勢に回るしかなかった。
明治はどうにか、斑蜘蛛の刀を防ぎながら、必死に反撃の糸口を探すが、その隙が中々見つけることができないでいた。
そうしているうちにも、斑蜘蛛の凶刃は、明治の防御を掻い潜り、明治に傷をつけていく。
「明治さん!」
「アキ君!」
近くにいた光姫と幸が、心配そうに明治に声を掛けるが、明治には余裕がなく、応えることができない。
「(なんとか反撃しなくちゃ、どこかに隙は…)」
「明治!」
歯を食いしばりながら、必死に耐え忍ぶ明治の耳に、突然隆宗の声が届いた。
と同時に、脳裏をよぎったのは、剣術指南を受けた時の隆宗の言葉だった。
―いいか、明治。相手に隙が見つからない時は、隙を作らせろ
―敵に、自分の攻撃してほしい場所へ誘導すればいい
―そうして、敵がその場所を攻撃してきたら、後は今まで通り攻撃を受け流し、斬る
「(思い出した!)」
明治は、斑蜘蛛が刀を振り上げた瞬間に、頭の上に掲げていた刀を下げた。
斑蜘蛛は隙ありとばかりに、大きく刀を振り上げ、勢いよく、明治の頭めがけて振り下ろす。
その瞬間を見計らって、明治は柄を上に、剣先を下に提げ、斑蜘蛛の刀を受け流す。
刀身を滑っていく斑蜘蛛の刀を見ながら、明治はくるりと手首を返し、そのまま鋭く刀を振り下ろした。
斜めに振り下ろされた明治の刀は、斑蜘蛛の右肩を深く切り裂いた。
「がぁぁ!」
斑蜘蛛は刀を落とし、がくっと膝をついて、右肩を押さえる。
その傷は、致命傷には程遠いが、戦意を奪うには十分な傷だった。
「俺様が…、こんなガキに…」
「お頭!」
斑蜘蛛がやられたことで、野盗たちは動揺を露わにする。
と、同時に、城からの援軍も、河原に到着し、鉦定が明治のそばへと駆け寄った。
斑蜘蛛は、舌打ちすると、部下たちに命令を下した。
「野郎ども!これ以上は不利だ!退くぞ!」
斑蜘蛛は、刀を拾い上げると、部下たちを率いて、どこかへと去っていった。
それを見た明治は、刀を落とすと、その場に座り込んでしまった。
「アキ君!」
援軍に縄を解いてもらった幸が慌てて駆け寄って、抱きついてきた。
明治は、困ったように笑いながらも、幸たちの無事に安堵するのだった。