分からない心…

ある日、あの人は消え去った。
哀しそうな微笑みを携えて。
君には分からないだろうね。
そんな言葉を残して。
自分の目の前から消え去った。
自分はただ幸せだったのに。
あの人のそばにいて。
あの人の作り出す物語を聞いて。
ゆっくりと過ぎていく時間に身をゆだねていた。
そんな時間が何よりも好きで。
何よりも幸せだったのに。
何故、あの人は消えてしまったのだろう。
自分に残したあの言葉の意味も分からない。
あの人は自分に無い全てを持っていた。
あの人は自分の憧れだった。
銀河鉄道のカムパネルラに憧れる。
親友のジョバンニと同じように。
自分にないものを持っていて。
あの人は更に何かを求めていた。
何を求めていたのだろう。
あの人が消えたときから。
長い時間が経った今になっても。
あの人が残した言葉が。
あの人が求めていたものが。
あの人の心が分からない。
もう、あの人に会うことができないから。
その答えが出ることは無い。
延々と同じ問いを繰返しながら。
自分はいつまでも悩んでいる。
自分はジョバンニと同じだから。



人の心というものはその人自身にも分からない時があります。
さて、文中に出てくる「銀河鉄道」「カムパネルラ」「ジョバンニ」はご存知の通りです。
宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」です。
実は私もこの話は読んだことが無いのですが、私が読んでいる小説に幾つか登場するので、あらすじ程度は知っています。
時間が取れたら、この本も買って読んでみたいですね。(笑