そろそろ長袖でないと厳しい
今日この頃ですが、
皆様、いかがお過ごしでしょうか…?
さて、学生時代に比べて、
日記の更新頻度が落ちた私ですが、
それに輪をかけたように、
私の知り合いたちのブログが
更新されていません。
もしかしたら忙しいだけなのかもしれませんが、
やはりどこか心配になってしまうのは
私だけでしょうか。
そんなわけで、最近、私が過去に書いた日記、
そして、知り合いが過去に書いたブログを
読み返すことがあります。
懐かしい思いですね。(笑
というわけで、今回も続きを更新します。
しかし、話しが進まない。(泣
以上、本日のgachamukでした。
それでは、どうぞ。




 やがて、自宅に着いた明治は、制服を着替えた後、どさっとリビングのソファーに座りこんでしまった。メールで分かっていたことだが、母親はまだ帰ってきていない。キッチンのテーブルには、明治の分の夕食がラップに包まれて、鎮座していた。
 テレビもつけていないので、家の中は静まり返っていて、時計の秒針の音だけが、やけに大きく響いている。
 そんな静かな空間が、明治はとても気に入っていた。自分を煩わせるものもなく、嫌な気分になることもない。何も考える必要もない。そういう場所でぼうっとすることが明治の唯一の楽しみだった。
 明治は、それからしばらくソファーに寝転びながら、ぼうっと天井を見つめていたが、やがて、空腹を訴える腹の音に負け、もそもそと夕食を食べるのだった。
 そうして、一人寂しく食事をした明治は、食器を片づけて自室へ戻り、今日出された課題を終わらせ、少し長めに風呂に入った後、まるで嫌なことは忘れて、さっさと夢の中に逃避したいとばかりに、高校生にしてはだいぶ早い時間に、布団へともぐりこみ、本日最後のため息を吐いた後、ゆっくりと目を閉じた。
 怪しげな男に、奇妙な石を渡されるというイレギュラーこそあったものの、基本的には、これが明治の一日である。
 翌日、携帯電話に設定していたアラームが鳴り響き、明治はのそのそと起き上がる。そして、いつもと同じ一日の始まりに、暗鬱としたため息を吐いて、いつものように制服に袖を通した。
 やがて、支度を終えた明治は、家の鍵を掛けてから、とぼとぼと学校への道を歩き始めた。
「はぁ。どうせ今日も呼び出されるんだろうなぁ。」
 いつもと同じようにとぼとぼと歩いていた明治は、すれ違うカップルを羨ましそうに眺めて、ぽつりとつぶやく。
「せめて、僕にも彼女がいればなぁ。学校も楽しくなるんだろうけど。」
 彼女どころか、友達さえも碌にいなくて、話しかけてくるのは教師もお手上げの不良集団だけということを考えると、学校生活に希望が持てないのも、仕方のないことかもしれない。
 そうして、暗く沈みながら歩いているとき、ふと明治は、昨日怪しげな男からもらった石のことを思い出す。その石をポケットから取り出しながら、明治は男が言っていたことを思い出した。
「確か、僕は珍しいオーラを持っているだっけ。」
 明治は呟きながら、自分の体を見てみたが、当然そんなオーラなど見えるわけもなく、逆に自分の行動に苦笑してしまった。
「なにやってんだろう、僕は。そういえば、これお守りとか言ってたっけ?」
 石をかざしてみると、相変わらず、不思議な光を放っているように見えた。
 明治は石をポケットに仕舞うと、少し気分が晴れたような顔をした。
「まあ、気休めとはいえ、ないよりはましか。」
 明治は、いつもより前向きな自分の発言に気づかないまま、いつもより軽い足取りで学校へ向かった。
 教室へ入ると、いつものようにクラスメイトからの視線が集中した。普段なら、その視線を気にして、こそこそと自分の席に行くのだが、今日は、不思議とその視線が気にならなかった。
 明治は、席について、窓の外をぼうっと眺めながら、今日は何だかいいことが起こりそうな予感がしていた。
 しかし、明治のその予感は、やはりというかなんというか、見事に裏切られてしまった。
 明治が、いつもより少し真面目に授業を受けていると、携帯電話が、静かにそのメールの着信を告げた。
 そっとメールを開くと、そこにはやはり、いつものように財部からの招集命令が書かれていた。
 予感が裏切られたことにがっかりしながら、明治は仕方なく招集に応じ、いつものように体育館裏にはせ参じた。そして、いつものようにメモ帳を突き出され、学校を抜け出し、コンビニで買い出しを行う。
 普段なら、それを渡し終え、そこで解放されるのだが、今日は少しだけ違っていた。明治が、うっかりメモと違うものを買ってきてしまったのだ。
 当然、不良は怒り、明治の胸倉を掴むと、その場に引き倒した。
「てめえ!なんでこんなの買ってきてんだ?ああ!」
 恐ろしい形相で睨みつけてくる不良に、明治はただ怯えるしかできなかった。黙り込んでしまった明治に、不良はさらに脅しかけてきた。
「なんとか言えや!コラァ!」
 不良が、勢いよく、近くのゴミ箱を蹴飛ばした。さすがに、暴力を振って、警察に駆け込まれたら厄介だと思っているのだろう、不良たちは決して明治に暴行を加えたりしない。
 それでも、やはり気の弱い明治には効果はあり、明治は委縮してしまった。
「ご、ご、ご、ごめんなさい。」
「ああっ!きこえねぇなぁ!」
「ご、ごめんなさい!」
「けっ。」
 涙目になりながら、必死に謝る明治を睨みつけながらも、不良はどうにか引き下がった。
 一方、やっと解放された明治は、涙ぐみながらも、どうしていいのかわからず、おろおろとしていた。その様子をみた財部は、煩わしそうな顔をして、まるで虫を追い払うように手を振った。
「もう、お前、鬱陶しいから帰っていいよ。」
 そんな態度で追い払われた明治だが、財部の態度にプライドが傷つくよりも、解放されたことへの安堵で、ほっとしながら、その場を立ち去った。
 そして、いつものように、屋上に行こうとしたが、屋上に向かう途中で教師に見つかってしまい、そのまま授業を受けることになってしまった。
 明治は、仕方なく、残りの授業をできるだけ小さくなりながら受け、終業のチャイムが鳴った途端、全速力で校門から飛び出していった。
 すれ違う人たちが唖然としながら、視線をよこしてくるが、今の明治にそんなことを気にする余裕はなく、息切れを起こすのも構わずに走り続けた。
 そうして辿り着いたのは、近所の河原だった。明治は、ふらふらと土手に降りるとそのまま、その場に座り込んでしまった。
 せっかくお守りで、少しは前向きになれたと思っていたのに、そんな時に限って、散々な目に遭ってしまった。
 明治は、ポケットから石を取り出すと、ぎゅっと握りしめた。
「畜生、何がお守りだよ!これのせいで、今まで以上にひどかったじゃないか!」
 明治は、八つ当たりに、その石を投げ捨てようと、握った手を大きく振りかぶった。
 しかし、その石に、まだ未練があるのか、何か別の意思が働いたのかはわからないが、結局、明治はその石を投げ捨てることができなかった。
 そして、そのまま強く石を握りしめると、明治は逆らおうともせず、おとなしく不良たちのいうことを聞いてはパシリにされ、何かあれば脅されて、虫のように扱われても何もできない自分の弱さが悲しくて、声を押し殺して、泣き始めた。
 それから、しばらくして、ようやく涙が止まり、少しだけ目を赤くした明治は、泣いて少しは気が晴れたのか、無言で自宅へと帰っていった。