もうすぐ冬だというのに夏日な
今日この頃ですが、
皆様いかがお過ごしでしょうか…?
さて、本日も事務のおばちゃんはお休みです。
何でも、昨日からの4連きゅで海外に行くそうです。
全く持って羨ましい!
これだから金持ちは!
さて、まったく関係ないですが、
以前書いたブログサイトの移転ですが、
現在、候補としてエキサイトブログ
アメブロがあります。
近々、どちらかに絞って、
本格的に引っ越そうかと思います。
とはいえ、現在更新中の話を
ひと段落させてからになりますが。
というわけで、今回もその話を更新します。
しかし、どうしてこうも気が付けば毎度毎度
予定外のことばかり書いてるんだろう。(汗
以上、本日のgachamukでした。
それではどうぞ。




「…に、面…。」
「もし…て、…人じゃ…。」
 がやがやと騒がしい雰囲気に、明治はゆっくりと目を開けた。途端、目に飛び込んできたのは、明治を覗き込む人々とやけに高い、明治の知らない天井だった。
「起きた!起きたよ!」
「本当だ!起きた!」
「誰か、お館様を呼んで来い!」
 明治が目を覚ましたことに反応して、あるものは誰かを呼びに廊下を走り、あるものはより一層明治を見ようと、近づいて来たりと野次馬たちが一斉に動き出した。老若男女さまざまだが、皆一様に和装だった。
 明治が呆然としていると、野次馬の一人の老人が恐る恐るといった様子で、声をかけてきた。
「あんた、一体何者じゃ?なんで、そんな面妖な格好をしておる?」
「…?」
 何が何だかよくわかっていない明治が、質問に答えあぐねていると、老人は諦めたようにため息を吐いた。
「なんじゃ?言葉が通じておらんのか?つまらん。」
 老人はくるりと踵を返すと、そのままどこかへと立ち去って行った。それを受けて、明治を囲んでいた野次馬たちも、徐々に引いていき、やがて、一人の少女を除いて、誰もいなくなった。
 明治は混乱しながらも、状況を確認しようと、残っていた少女におずおずと声をかけた。
「あの〜。すいません。」
「ひゃっ、ひゃい。」
 唐突に声を掛けられたことに驚いたのか、少女は飛び上がらんばかりに驚き、慌ててふすまの陰に隠れてしまった。
 明治が唖然としていると、少女は隠れたふすまからそっと顔をのぞかせた。
「……。」
「……。」
 明治と少女の間で、気まずい空気が流れた。先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返っていたが、どたどたと響く足音が、沈黙を破った。
「客人が目を覚ましたと聞いたが、幸(ゆき)、お主は何をしているのだ?」
 幸と呼ばれた少女は、驚いたように振り返ると、慌ててその場に平伏した。
「お、お館様!あ、あの。爺(じじ)様(さま)が言葉が通じないとおっしゃっていましたので。」
 平伏したまま、慌てて弁解する幸に、男はあきれたように笑った。
「それで、どうしようかと迷って、ふすまに隠れておったのか?全く。」
「申し訳ありません。お館様。」
「別に責めていない。もう良いから、お主は茶を入れて参れ。」
「はい。」
 幸が立ち去っていくのを確認して、改めて、お館様と呼ばれた男が姿を見せた。
「全く。皆にも呆れたものだ。」
 やれやれと言いたげに肩をすくめた男は、明治のそばに胡坐をかいた。
 年のころは、およそ二十代後半だろう。髪をポニーテールのようにまとめ、いたずらっ子のような目つきで、明治を見つめている。その目つきのせいか、見方によっては、明治と同年代にも見える。先ほどまで、明治を囲んでいた野次馬たちと同じような、和装に身を包んでいる。
 明治が、じっと観察していると、男がずいっと手を出しながら、自己紹介を始めた。
「俺は、山辺(やまのべ)隆宗(たかむね)。この八(や)洲(しま)城の城主にして、八洲の国の領主だ、ってお主に言葉は通じておるのか?」
「やしまのくに?国ってここは日本じゃない?」
「おおう。なんだ。言葉は通じていたのか。それならそうと言わんか。」
 驚いて目を丸くしていた隆宗は、軽く咳払いをしながらも、明治に文句を言った。
が、明治は、それを無視して、隆宗に詰め寄った。
「教えてください!ここはどこなんですか!日本じゃないんですか!」
「だから、ここは八洲の国と言っておるだろう。」
 隆宗は、明治をまるで馬するみたいに「どうどう」と宥(なだ)めすかす。
しかし、明治にとっては、重大な問題だからだろう、隆宗が宥めてもまるで効果がなく、より一層興奮しているようだった。
 明治が興奮して詰め寄り、隆宗がそれを宥めながら逃げるという奇妙な追いかけっこは、それから五分ほど続いたが、お茶を持ってきた幸と、一人の女性の登場によって、終わりを告げた。
「あなたたち、何をやってるんです?」
 その声に振り向いた隆宗は、助かったとばかりに顔を輝かせた。
「お光(みつ)。ちょうど良いところに。助けてくれ。」
 お光と呼ばれた女性は、仕方ないとばかりにため息を吐くと、いまだ興奮している明治の手をそっと取り、自分の手で、優しく包み込み、明治に優しく微笑みかけた。。
「あなたも落ち着きなさい。ここには、何も怖いものなどありませんよ。さあ、目を閉じて、ゆっくりと息を吸って、吐いて。そう、いい子ですね。」
 まるで赤子をあやす母親のように、明治の背をポンポンと叩く。
すると、先ほどまで興奮しきっていた明治が、徐々に落ち着きを取り戻し始めた。
全てを包み込むような、光姫の素晴らしい母性のおかげだといえるだろう。
さて、光姫のおかげで落ち着きを取り戻した明治は、光姫に「ありがとうございます。」とお礼を言った後、幸の持ってきたお茶を飲みながら、改めて隆宗に現状の確認をした。
「さっきも聞きましたけど、ここは日本じゃないんですか?」
「さっきも言ったが、ここは八洲の国。お主がいう日本ではないな。」
「そうですか。」
 隆宗の答えを聞いて、明治はがっくりと肩を落とす。
 と、そこへ光姫が、ふと思ったことを口に出した。
「あなたの言う、その日本ですけど、どこにあるのか、わかるかもしれませんよ?」
 明治と隆宗が勢いよく、光姫に振り返った。
「ど、どういうことだ?お光よ。」
 若干土盛りながら聞いてくる夫に、光姫は苦笑しながら答えた。
「お客人の髪の色も、目の色も、肌の色も私たちと一緒です。ということは、少なくとも南蛮の人たちとは違うということですよね。そして、しゃべる言葉も一緒。ということは、そう遠くない国ということになりませんか?」
 明治と隆宗は、お互いに顔を見合わせ、同時に納得した。
「「なるほど。言われてみれば。」」
 その様子があまりにもおかしかったのか、光姫は口元を隠してくすくすと笑う。
「そういうことなら、地図で探せばいいのでは?お客人も、自分の国の位置くらいはわかるでしょうから。」
 光姫は、そういいながら、お茶を出したまま、その場に控えていた幸を振り返る。その動作だけで、主が何を言いたいのか分かったのだろう。幸は、軽くうなずくと、どこかへと立ち去って行った。