冬なのに暖かいとはこれいかに
と思う今日この頃ですが、
皆様、いかがお過ごしでしょうか…?
さて、実は先日めでたくもない誕生日を迎え、
そろそろ、あらさーと呼ばれる年になってしまいました。(泣
まだまだ子供だと思っている自分自身が、
そんな年になってしまったことに驚きです。
それはそうと、ここの所、夢見が悪くて困っています。
何故か、最近、自分が死ぬもしくは死にそうになる
という夢をよく見るのです。
これは何かの暗示なのでしょうか。
そんなわけで、いつも夜中に目が覚めて
朝はかなり眠たいです。
そんなこんなで、今日もいつもの奴を更新します。
今年中に書き終わるかなぁ。(汗
以上、本日のgachamukでした。
それでは、どうぞ。




やがて、城の案内が終わり、部屋に戻った明治が何をするでもなくぼうっとしていると、幸が、控えめに戸を叩いて、顔をのぞかせた。
明治さん。夕食の支度ができました。お館様が一緒にお食事したいとおっしゃっていたので、ご案内いたします。」
「分かりました。」
 明治が、幸の後ろについて歩いていると、突然、幸が話しかけてきた。
「そういえば、明治さんは、今いくつなんですか?」
「僕ですか?僕は今、十五歳です。」
 それを聞いた幸は、嬉しそうに明治を振り返った。
「あら、じゃあ私のほうがお姉さんですね。」
「?幸さんはいくつなんです?」
「私は十六です。」
「一つしか違わないじゃないですか。」
 ツッコミを入れながら、明治は気になっていたことを話した。
「僕より年上なら、僕のことは呼び捨てでいいですよ。あ、あと敬語もいいです。」
「そう?それじゃあ、ためしに、明治……さん。」
 どうやら、幸は敬語抜きにしゃべることはできたが、うまく明治を呼び捨てにできないらしく、それから何度も呼び捨てにしようとしたが、そのたびに失敗していた。
 その様子を見て、明治は苦笑しながら、提案した。
「もう、呼び捨てはいいです。幸さんの呼びやすいようにしてください。」
 それを聞いた幸は、何故か嬉しそうに破顔した。
「じゃあ、「アキ君」て呼ぶね。」
「それでいいです。」
 あまりに嬉しそうに、幸が言うので、明治は訂正を求めるのをあきらめることにした。
 一方、幸は何がそんなに嬉しいのか、しばらく、明治の名前を連呼していた。
「アキ君、アキ君、アキ君、アキ君、アキ君、アキ君、アキ君、アキ君、アキ君。」
 さすがにそこまで連呼されると、例え明治でなくとも恥ずかしくなるだろう。事実、明治も、恥ずかしくなってきて、幸に懇願した。
「あの、さすがに連呼するのはやめてもらえませんか?恥ずかしいので。」
「恥ずかしい?そんなに?」
「はい。」
「そう。それじゃあ、仕方ないね。」
 本気で残念そうにしながらも、幸が連呼するのをやめてくれたので、明治は安堵のため息を吐いた。
 そうして話しているうちに、いつの間にか隆宗と光姫が待つ部屋に着いた。
 幸が軽く戸を叩いて、声をかけると、隆宗が待ちきれないといった様子で戸を開いて、明治を中に引っ張り込んだ。
「待っていたぞ、明治。」
 幸は、主の子供のような行動に苦笑しながらも、部屋から立ち去ろうとしたが、隆宗がそれを呼びとめた。
「幸、待ちなさい。お前も今日は一緒に食べないか?」
「は?え?」
 幸は、主の突然の申し出に戸惑って、光姫に助けを求める。
 しかし、光姫はただ微笑んでいるだけで、何か言おうとはしなかった。
 幸は、しばし思案した後、諦めたようにため息を吐いた。
「分かりました。私の分も含めて、食事をお持ちしますので、少しお待ちください。」
 そういうと、幸は一旦部屋を出て行った。
 明治の疑問に満ちた視線を感じた隆宗が、笑いながら説明した。
「何、単純に幸とも一緒に食事をしたいと思っただけだ。加えて言えば、幸にもお主の未来の話を、聞かせてやりたいと思ったのだ。」
「はあ。そういうことですか。」
 明治は、よくわからない顔をしながらも、一応は納得したようだった。
 やがて、数人の女中と一緒に、幸が食事を持ってきて、食事が始まり、しばらくしたころ、隆宗が話をきりだした。
「明治。未来の話を聞かせてくれないか?」
「未来?これから起こる事件のことですか?」
「そうじゃなくて、お主が住んでいた時代のことだ。お主が普段、どんな風に過ごしていたのか、それを教えてくれないか?」
 明治は少し考えた後、「あまり面白い話でもないですけど。」と前置きをしてから、話し始めた。
「まず僕らの時代は、こことは全然違います。国同士の争いはなくて、みんな平和に暮らしています。」
「ほう。それは、誰かが天下統一を果たしたということか?」
「うーん。微妙に違いますね。僕らの時代では、民衆から代表を選んで、その選ばれた人たちが、法律…掟みたいなのを決めるんです。それで、決められたその掟をみんなが守ります。」
「それを守れない輩はどうするんだ?」
「警察が捕まえます。」
「「「けいさつ?」」」
 明治の話を聞いていた三人が、一斉に首を傾げる。明治は、その光景に吹き出しそうになりながら、説明を続ける。
「うーん。何て言ったらいいかな。掟を破った人たちを取り締まる組織みたいなものです。」
「そんなものがあるのか。」
「はい。まあ、とにかくそんな感じでみんな平和に暮らしています。」
「で?お主は普段どうしているのだ?」
「えっと、基本的には高校に行ってます。」
「「「こーこー?」」」
 先ほどと同じように、再び三人が一斉に首を傾げたので、明治は慌てながら説明を加えた。
「ええっと、高校とは、僕らが勉強するところです。ほかにも、小学校とか中学とかもあります。」
 幸は、何が何だか分からないようで、おずおずと明治に聞いた。
「そのこーこーというのと、しょう…なんとかと、どう違うの?」
「うーん。小学校っていうのは、小さい子供、確か七歳から十二歳の子供たちが一番基本的なことを勉強する場所で、中学が十三歳から十五歳まで、高校が十六歳から十八歳まで通う場所です。上に行くにつれて、勉強することがより高度になるんです。」
「そこでは、どういうことを勉強してるの?」
「そうだなぁ。たとえば、漢字の勉強とか、生物の勉強とか、いろんな計算方法とか、英語…、南蛮の言葉とかかなぁ。」
「じゃあ、アキ君は南蛮の言葉がしゃべれるの?」
「「アキ君?」」
 隆宗と光姫が違うところに食いついてきた。二人の顔を見るとにやにやと笑っている。
「ほう。幸。お主、明治を「アキ君」と呼ぶようになったのか。」
「まあまあ、すっかり仲良くなったみたいね。」
「はい。」
 幸は、にっこりと笑っているが、明治は照れ臭いのだろう、顔を真っ赤にして俯いてしまった。そして、明治のその反応が、さらに隆宗と光姫を調子付かせた。
本当にノリのいい夫婦である。
「あらあら、明治さんたら、顔を真っ赤にしちゃって。可愛い。」
「そうだ。そんなに仲良くなったなら、いっそのこと、幸と明治で夫婦になればいいのではないか?」
「あら。それはいいですね。それじゃあ、ついでに明治さんは、私たちの息子にしてしまいましょう。」
「それはいいな光。」
 隆宗と光姫は、本人たちをそっちのけで盛り上がっている。
 二人は、さらにエスカレートして、将来の話などをし始めた。
「私、早く孫の顔が見たいですわ。」
「うむ。それはいい。そのころには俺も引退して、明治に跡を継いでもらおう。」
「明治さん。時々は子供を連れて遊びに来てくださいね?」
「そうだぞ。孫に向かって「おじいちゃんだぞー。」と早く言ってみたいんだからな。」
「あらあら。それじゃあ、私はおばあちゃんですね。」
 二人の妄想は止まる気配はない。それどころか、光姫に至っては、両手を頬にあてて、身悶えはじめ、口調まで変わってしまっている。
「私、やっぱり孫は男の子と女の子一人ずつがいいですわ。」
「だ、だが。孫娘を嫁に出すなど、俺には耐えられんぞ。」
「あらあら。そんな時がきたら、あなたは号泣しそうですね。」
「どこの馬の骨とも知らん奴に、俺の大事な孫娘はやらん!」
 二人の妄想は止まらずに、とうとう明治と幸の子供がすでに生まれ、婚姻が可能な年齢にまで成長したらしい。
 そろそろ話の収拾がつかなくなってきたため、明治は顔を真っ赤にしたまま、二人の暴走を止めることにした。
「ちょ、ちょっと二人とも。話が飛躍しすぎです!いい加減、変な妄想はやめてください!」
 明治が二人を止めようとするが、あまり効果はない。
「幸さんも、笑ってないで。二人を止めてくださいよ。」
 困り果てた明治が幸に助けを求める。
 しかし、どうやら幸も、隆宗たちと同様にノリのいい性格をしているらしく、幸は隆宗たちを止めるどころか、ちょっとはにかんだように頬を染めながら、明治にすり寄ってきた。
「アキ君は、私と結婚するのが嫌なの?」
「え、い、いや、その…。」
 幸がすり寄ってきたことで、女性に免疫がない明治は、どぎまぎしてしまった。
 その様子を見た隆宗たちは、さらに明治をからかい始める。
「どうなんだ?明治?幸は、光には及ばないが、この城でも五指に入るほどの美人だぞ?」
「明治さん?幸に恥をかかせるおつもりですか?」
「私はこんなにあなたをお慕いしているのに…。およよよ。」
 幸は袖で目元を隠して、泣きまねを始め、それを受けて、隆宗と光姫が、明治に向かってああだこうだと言い立てる。
 一方明治は、パニックに陥ってしまい、何が何だか分からなくなってしまった。
「あ、わ、あ…、だあああー。」
 そしてとうとう、食事中だということも忘れて、明治は叫びながら部屋を出て行ってしまった。
「明治!」
「明治さん!」
「アキ君!」
 それを見た三人が、慌てて明治を追いかけたが、見失ってしまった。
 城の人たちに聞き込みをして、どうにか明治を見つけ出せた三人は、明治に向かって土下座をした。
「「「調子に乗って、すいませんでした。」」」
 それを見たためか、城中を走り回ったためかは定かではないが、どうにか冷静さを取り戻した明治に、三人はどうにか許しを得ることができたのだった。