年度末間近で忙しくなる
今日この頃ですが、
皆様、いかがお過ごしでしょうか…?
さて、実はここ最近、
何故か以前一度読んで放置していた小説を
再度読み返すということを何故かしています。
うん、正直面白いです。
最初に読んだころには気づかなかったこととか、
そういう発見があったりします。
そんなわけで、ここ最近、自室ではPCの前に
いる時間よりも、ベッドの上でゆっくりと本を
読む時間がかなり増えています。(笑
ただ、以前は整列していた本が、
ここ最近は無秩序になってきているので、
片づけをしなければいけないのが難点です。(汗
ということで、いつものあれを更新します。
ちなみに、今作も前作も結構実験的要素が含まれています。
以上、本日のgachamukでした。
それでは、どうぞ。




 やがて、空が茜色から群青(ぐんじょう)色(いろ)に変わり始めたころになって、隆宗たちは、ようやくすべての罠が仕掛け終わったと報告を受けた。
 その報告を受けて、隆宗たちの緊張も高まらざるを得なかった。
 次第に夜の気配が強くなっていく中、作戦の最終確認のため、武将たちは本陣に集まって、作戦開始前の最後の確認をしていた。
 隆宗は、罠の設置の進行状況、動作確認、自分たちの移動する道順、敵軍にもぐりこませたサクラの状況など、必要事項を確認し終えると、全兵を本陣前に集め、兵を鼓舞するための演説を行った。
「皆の者、よく聞いてほしい。皆も知っての通り、今回の敵は、隣国の犀音だ。兵力、練度、どちらも我々よりも上を行っている。しかし、今回のこの戦で我々が負ければ、奴らは確実に我々の国を乗っ取ろうとする。だから、この戦は絶対に負けるわけにはいかない。我々の国を守るためにも、どんな手段でも我々は厭わない」
 隆宗が一度言葉を切って、集まった兵たちを一通り眺めると、兵たちは開戦直前で皆が緊張していた。
 隆宗は、一度ふっと表情を緩めると、再び話を続けた。
「だが、俺はあえて皆に、この命令をする!絶対に死ぬな!必ず生き延びろ!どんなに無様でもいい!敵に背中を見せても構わない!ぎりぎりまで戦って、それ以上は死ぬと思ったなら、ためらいなく退け!」
 あまりに意外な命令に、その場が騒がしくなる。
 明治も、驚いたように他の武将を見るが、彼らはどうやら慣れているらしく、特に驚いた様子もなく平然としていた。
「俺からは以上だ。開戦時刻は半刻(一時間)後。各自、それまでに入念に準備をしておくように」
 そういうと、隆宗はくるりと踵を返し、本陣の幕の中に入っていった。
 兵たちがどやどやと解散する中、明治は隆宗を追って、幕の中に入った。
「お館様…あの、ちょっといいですか?」
「なんだ?」
 明治は、さっきの隆宗の言葉の真意を問いただした。
「どうして、あんなことを言ったんです?」
「あんな事とは?」
「生き残れって言ったことです。あんなことを言ったら、戦わずに逃げる兵も出てくるのでは?今回の戦は絶対に負けられないのでしょう。だったら、必ず勝てとかそういう感じに言った方がよかったのでは?」
「確かにその通りではある。だが、人は死ねばそこまでだ。死んでしまえば、そこから先、笑うことも、泣くことも、怒ることも、もちろん戦うこともできなくなる。例え、戦に負けても、生き残ってさえいれば、次がある。だから、俺はいつも生き残れと命令してるんだ」
 隆宗が意外に深く考えていたことに、明治は感心した。
「さて、間もなく作戦が始まる。明治、お前も準備をしっかりしておけよ」
「はい!」
 元気に返事をして持ち場に戻る明治を、隆宗は優しい目で見送った。