露天風呂でのんびりしたいと思う
今日この頃ですが、
皆様、いかがお過ごしでしょうか…?
さて、唐突ですが私、
実にネーミングセンスがありません。
更新している小説をお読みの方は気づいたと思いますが、
人物の名前にしても、
その他の名前にしても
一切のセンスを感じることができません。
どうやらこれは代々家族に受け継がれているようで、
我が愛犬の名前を付ける時も、
安直な名前に落ち着きました。
誰か、素晴らしいネーミングセンスをお持ちの方が
いれば、ぜひご教授願いたいです。(笑
そして、今私の頭を悩ませているのは、
小説のタイトル。
誰か候補があれば、コメントなどで教えてください。
そんなわけで、いつもの奴です。
今回は少し短めです。
以上、本日のgachamukでした。
それでは、どうぞ。




 一方そのころ、明治はひとり城の書庫にいた。
 結局あの後、一人取り残された明治は、道場で素振りをしていたが、しばらくして飽きてしまったので、軽く汗を拭いて、自分の部屋に戻ったのだった。
 そして、そこで目に入ったのが、戦国時代にやってきた明治が持っていた、謎の商人からもらった謎の石。それを見て、明治は自分が城にいる本来の目的を久々に思い出したのだし、ここ最近入っていなかった書庫へと足を向けたのだった。
 しかし、こうして城の書物を調べてみてはいるものの、中々現代に帰る方法が見つからない。というよりも、明治の気分が乗らないらしく、先ほどから調べものに集中できていなかった。
「駄目だ。なんか集中できないや」
 バサッと持っていた本を投げ出して、そのまま仰向けに倒れこみ、薄暗い天井を見上げた。
「早く元の時代に帰らなきゃいけないはずなのに、いざその方法を探したりすると、どうもやる気が無くなるんだよな。なんだろう、この気持ち。別に帰りたくないわけでもないはずなのに…」
 誰に向けたわけでもない独り言を、ぶつぶつ呟く。
 実際のところ、明治の中には現代に帰りたいという気持ちと、この時代に残りたいという、二つの相反する気持ちが混在している。そして、この時代に残りたいという気持ちの方が、明治の中でどんどん大きくなっている。だから、現代に帰るための手段を探していても、気乗りしないのである。
 しかし、本人はそのことに気づかずに、頭を悩ませていた。
「あ〜もう!分からん!」
 明治は、頭をガシガシと掻きながら、「うが〜!」と吠えた。
 突然聞こえてきた奇声を聞いて、書庫の近くを偶然通りがかっただけの女中がびくりと足を止める。そして、その女中は眼をぎゅっと瞑って、頭をプルプル振ると、足早に去っていった。その後、城の書庫に幽霊が出るという噂が流れたかどうかは定かではない。
 さて、そんなことは露とも知らない明治は、書庫の中でいつの間にか眠ってしまっていた。
 口から涎を垂らし、間の抜けた顔で眠り続ける明治の元へ、一つの人影が忍び寄った。
 その人物は、明治のそばまでよると、大きく息を吸い込んで、一瞬呼吸を止めると、声を張り上げた。
「こらー!!起きろー!!」
「うひゃあ!?」
 耳元で、突然大声を出されて、明治は慌てて飛び起きた。
 そんな明治を見て、驚かせた張本人は満面の笑みを浮かべて、
「おはよう。アキ君」
「何だ。幸さんか。驚かさないでよ」
 気持ちよく眠っていたところへ、突然の大声で叩き起こされた明治は、不満げな声で幸に抗議した。
「だって、アキ君。こんなところで寝てるんだもん。風邪ひいちゃうよ」
 まったく悪びれた様子のない感じで、幸が起こした理由を話した。
その顔を見る限り、風邪をひくからという理由よりも、面白いからという理由のほうが正解な気がするが、ここは気にしない方が吉だろうと判断した明治は、苦笑した。
 なぜ明治が苦笑するのか分からない幸は、少しの間首を傾げていたが、やがて、話を切り替えるように、ポンと手を打った。
「ところで、何を調べていたの?」
「ん?ああ、元の時代に帰る方法をね」
 それを聞いた途端、幸の表情が曇る。
「アキ君、帰っちゃうの?」
 明治は、困ったように頬を掻きながら、
「ん〜。それが、問題なんだ」
「どういうこと?」
「ここ最近、何か帰る方法を調べることが減った気がするんだ。もちろん、忙しいっていうのもあるけど、それ抜きにしても気が乗らないというか。現に今も調べていても、調子が出なくて」
「じゃあ、アキ君は帰りたくないの?」
 明治は自分の気持ちを整理するように、ゆっくりとしゃべり始めた。
「どうなんだろう?帰りたいって気持ちは確かにあるんだ。でも、ここにいて、お館様の手伝いをしたり、鉦定さんにいろいろ教えてもらったり、幸さんと話したりして、そういうのが楽しくて、帰りたくないって気持ちもどこかにあるんだと思う」
「そっか。じゃあ、今は帰るかどうか分からないけど、とりあえず調べてるって感じ?」
「うん。そんなところ」
 明治の同意を聞いて、幸は顔を綻ばせた。
「よかった」
「ずいぶん嬉しそうだね」
「うん。もしアキ君が帰っちゃったら、私寂しいよ。私、アキ君のこと好きだから」
「え?」
 幸の思わぬ告白に、明治はドキッとした。
 明治が動揺しているのに気付かない幸は、そのまま話を続けた。
「お館様も、鉦定様も、他の武将の人たちも、光姫様も、おさねさんもみんな、私にとって家族みたいなものだから」
 動揺していた明治は、幸の話を聞いて、内心がっかりしたような、ほっとしたような奇妙な気持ちになった。
「(って、「好き」ってそういうことか)」
「私ね…、ってどうしたの?」
 明治の様子がおかしいことにようやく気付いた幸が、明治を覗き込む。
 明治は、慌てて顔の前で手を振りながら、ごまかし笑いを浮かべた。
「い、いや。何でもない…です。あ、あは、あはは」
「変なの」
「と、とにかく、話を続けて、ね?」
 幸は、明治の様子がおかしいことが気になって不審に思いながらも、続きを話しだした。
「あのね。私、家族がいないの。両親も、兄弟も誰も。みんな、私が小さいころに起きた戦に巻き込まれて、死んじゃったんだって」
「そう…なんだ」
「うん。それでね。唯一生き残った私を、まだ若かったお館様が拾ってくれて、この城で育ててくれたの。だから、このお城で働いてる人たちが私の家族みたいなものなんだ」
 悲しみや寂しさを微塵も感じさせずに、幸は笑う。
 明治は、そんな幸の笑顔を見ていて、辛そうに顔を歪めながら訊いた。
「寂しくないの?辛くないの?」
 幸は、それを頭を横に振って否定する。
「寂しくも辛くもないよ。だって、私幸せだもん。優しい人たちと一緒に居られて、一緒に笑ったり怒ったりして、毎日が楽しいもん」
「幸さんは、強いね。僕なんかよりも、ずっと」
「そんなことないよ。アキ君も強いよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
 そんなやり取りをしながら、二人は書庫の外へと出て、空を見上げた。
 そこには、二つの雲が寄り添うように、青空をゆっくりと漂っていた。