毎日のように寒波に襲われている
今日この頃ですが、
皆様、いかがお過ごしでしょうか…?
さて、以前もお話しした通り、
現在、私はとある大学で事務をしています。
そんな私が、なぜ学科を紹介するホームページを
作ることになったのでしょうか。(汗
しかも、細かい仕様を一切決めずに、
大まかなレイアウトのみ渡されて、
後はお願いしますと投げられました。
そして、極めつけは、ホームページビルダーなどの
便利なツールは一切なく、すべてタグ打ちで
作ることになりました。(泣
どうにか完成したら、今度は公開作業や保守管理まで。
一体業務外のことをどれだけやらされるのでしょうか。
正直、別料金でプログラマの1人月分の仕事料金をもらいたいです。(笑
そんなこんなで、いつもの奴を更新します。
話しもそろそろ佳境に入ってきました。
皆様、お付き合いのほどをお願いします。
以上、本日のgachamukでした。
それでは、どうぞ。




 それから半月ほどたったある日のこと。
 明治がいつものように鉦定に勉強を教わっていた時のことだった。
 突然、勉強をしている部屋に、隆宗がひょっこりと顔を出した。
「鉦定、明治の勉強はいつごろ終わりそうだ?」
 隆宗がにやりと笑いながら訊くと、鉦定は少し考えた後、同じくにやりと笑った。
「今日の大凡の範囲は終わっているので、もう少しですね」
 どうやら、二人の間だけで通じる何かしらのやり取りが、言外に行われたようだが、当然明治にそれが理解できるはずもなく、明治はひとり首を傾げていた。
 その様子がおかしかったのか、隆宗はますます意地悪そうな笑みを深めた後、誤魔化すように咳払いをすると、急に真面目な顔つきになって、明治に告げた。
「明治。勉強が終わったら、俺の部屋まで来なさい」
「へ?別にいいですけど…一体、何が…」
「今は気にしなくていい。勉強に集中しなさい」
 隆宗を探るような目つきで見つめる明治を、鉦定が急いで注意する。
 明治は、釈然としないものを感じながらも、渋々勉強に戻った。
「では、待っているぞ」
 隆宗も、これ以上探られたらたまらないといった様子で、さっさと部屋から退散していった。
 それから三十分ほどかけてその日の勉強を終わらせた明治は、先ほど言われた通り、隆宗の部屋を目指していた。
 しかし、すれ違う女中や小姓たちの様子がどことなくおかしいことに、明治は気づいた。まるで、何かを待っているような、そわそわとした空気が、彼らから伝わってくるのだ。
 明治は、その様子を怪訝に思いながら、辿り着いた隆宗の部屋の戸を軽く叩いた。
「お館様、明治です。勉強が終わったので、参りました」
「来たか。入れ」
 そういわれた明治が戸を開けた途端、急に幸が飛び出して、明治の頭に何かを被せた。
「わわっ!」
 急に視界を奪われた明治が、慌てて頭に被せられたものを取ろうと手を掛けると、今度は誰かに、両腕を引っ張られた。
「一体何なんですか!?」
 明治が周りに問いかけるが、誰もが無言のままだった。
 そして、明治がそのまま狼狽しているのをいいことに、その場の全員が明治に何かを取り付け始めたらしく、明治は体が段々重くなっていくのを感じた。
「お、重っ」
「我慢しなさい。男の子でしょう」
 明治の素直な感想に、光姫から叱咤の声が飛んで、明治は慌てた。
「ま、まさか、光様もいるんですか!?」
「あら?別に私がいてもいいでしょう」
「い、いや。まあ、それはそうですけど…って、そうじゃなくって。一体僕は今何をされてるんですか!?」
「ふふっ。それは見てのお楽しみだよ。アキ君」
 幸の弾むような声に、明治は嫌な予感しかしなかった。
 それからしばらく、明治が諦めて、体のあちこちに何かを取り付けられている感覚を味わっていると、ようやく作業が終わったらしく、
「うん、よし。お待たせ、アキ君」
 幸の言葉とともに、明治に被せられていた袋が外された。
「まったく。一体何の嫌が…ら…せ…って、なんだこれ!?」
 明治が文句を言いながら自分の身体を見て、驚きの声を上げた。
 明治が、着せられた鎧を眺めていると、幸が後ろから声を掛けてきた。
「ちょっとじっとしててね。兜も着けてあげるから」
 そう言って、幸は取り出した手拭いを手早く明治の頭に巻きつけ、そのまま手渡された兜を明治に被せると、顎の下で緒(お)を締めて、満足げに頷いた。
「うん、出来た。ちょっと鏡を見てみて」
 幸に促されて、明治は部屋に用意されていた姿見を覗き込んだ。
 全身を覆うようにしてつけられた鎧は、全体的に薄い青色で統一されている。外見は、明治がテレビや資料館で見たことがあるようなものと、似たような造りではあるが、一般的にイメージされるような重さはなかった。
 そうして、しげしげと鏡に映った自分を見つめていた明治だったが、見慣れない自分の姿に、どうしても違和感を拭いきれないでいた。
「何か、違和感がありますね」
「どこか寸法が合わないのか?」
 隆宗が鎧を調べながら訊くと、明治は苦笑しながら否定した。
「いえ。そういうことではなくて、単純に自分のこんな姿を見慣れていないから、違和感を感じるんです」
「なんだ。そういうことか。それはまあ、慣れるしかないな」
「ですね」
 明治は、隆宗の言葉に同意しながら、再び自分の姿を眺めた。
「それで?感想は?」
 面白がっているような口調の幸に、明治は困った顔をしながら頬を掻こうとして、兜に邪魔され、仕方なく手を下しながら、
「うーん。動きにくくはあるね。後は、思っていたほど重くなかったかな」
「それも慣れるしかない。重さのほうは、出来るだけ重くないようにと指示しておいたからな。その分、防御面で不安が残るから重要な部分には、布状の鎖を仕込んでもらった。お前だけのために用意させた、特注品だ」
 鎧の解説をしながら、隆宗が偉そうに胸を張った。
 そして、隆宗は思い出したように手をポンと打つと、そばに置いてあった細長い箱を開けて、中の物を取りだした。
「忘れるところだった。これもお前のものだ」
 隆宗に手渡されたものは、一振りの刀だった。
「刀…ですか」
「うむ。この国でも有名な刀鍛冶に作らせた逸品だ。銘は「緋(ひ)雨(さめ)」というらしい。これも、あまり重くてもいけないから、一般的なものよりも軽く、しかしできるだけ丈夫に作られているはずだ」
 明治は、そっと鞘から刀を抜いて、じっと眺めた。
 まだ何も斬ったことのない刀は、部屋の明かりを反射して、妖しげに光っていた。
 その光を見て、明治は急に自分の持っているものが恐ろしくなった。
 真新しい刀を持つ明治の手が震えているのを見た隆宗が、明治の肩に手を置きながら訊いた。
「それが恐ろしいか?」
「はい、どうしてかは分かりませんが…」
 明治は厳しい顔つきで胸中を告白した。
「大丈夫。それが正常な反応だ。刀とは人を傷つけるための道具だ。普通の人間ならば、誰でもそれに恐怖を感じるだろうな」
 隆宗の言葉に、明治は縋るような目を向けた。まるで、隆宗も刀が恐ろしいと感じていてほしいとでもいうように。
「お館様もそうなんですか?」
 隆宗は明治に視線を合わせて、優しげな顔をした。
「俺だけじゃない。鉦定も他の武将たちも、本当は誰も人を傷つけたくないと思っているはずだ」
「じゃあ、どうして。どうして戦うんですか?なぜ刀を持つんですか?」
「それは…、そうだな。必要だからだな」
 よくわかっていない様子の明治に、隆宗は説明をした。
「つまりはだ。傷つきたくない、傷つけたくないと言ったところで、この乱世に相手が攻めてくるのを止めるわけでもない。だからせめて、自分たちが傷つかないように、自分たちの大切なもの、家族や恋人、己の信念や誇り、そういったものを守るために戦うということだ」
「守る…」
「明治。お前にとって、大切なものはなんだ?それが傷つけられたとき、お前はどうする?」
 隆宗の問いかけに、明治は俯いて考え込んだ。
「今すぐでなくていい。ゆっくりと考えて、いつか、きちんとその答えを出せ」
 そう告げながら、隆宗は部屋を立ち去って行った。
 それからしばらくして、隆宗のもとに凶報が舞い込んできた。